コンジョイント分析、最適化、AHP

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コンジョイント分析、最適化、AHP

コンジョイント分析が一般化してきているようで、インターネットでもいろいろな記事を見ることができます。
しかし、「最適化」の概念が理解できていないと、計算の結果を有効に活用できません。たとえば、インターネットで「満室最適化アパートを実現-コンジョイント分析-」という記事を見かけました。
駐車場、駅距離、収納、バス、セキュリティ、間取り、付加設備、家賃などの条件の組み合わせでコンジョイントを分析を行って、重回帰分析のモデルを作成しています。そして、各要因の水準の偏回帰係数の一番高いものを抜き出して、「最適組わせモデル」としています。最終的には、実際の物件の諸条件に対応する回帰係数の合計で、各物件を評価しています。
一応(コンジョイント分析では、単調回帰やMONANOVA法を採用するというテクニカルなことはあるものの)これはこれで、投資物件を選ぶときに、そのアパートの入居率を予想するという意味ならアリだと思います。(投資物件として考えるなら、購入コストと期待収益によって利回りを計算するべきで、その過程で、実際にどの程度の入居が見込めるかの予想が立たなければなりません。)
ただし、「最適化アパート」という言い方は適切ではありません。なぜなら、条件がよくて家賃が安ければ、誰だってそれを選ぶでしょう。しかし、それは実現が難しいです。
各要因の水準の偏回帰係数の一番高いものを抜き出したものは、「理想」であって「最適化」ではありません。
最適化というのは、(工学用語で)コストと性能というような相矛盾する要素の空間で、バランスする点を見つけることです。多次元の要因の組み合わせでの最適化問題には、じつは自己組織化マップ(SOM)が役立ちます。コンジョイント分析の結果をSOMで分析すると、さらに有用な結果が得られます。たとえば、検討している物件の条件を現状のままで可能な最大家賃を設定するとか、より人気の高い条件に近づけるために(単にスコアを見るだけでなく大局な方向性を考慮して)現状のどこをどう直せばよいかを判断することができます。
ついでですが、回帰係数のようなスコアを用いて、複数の候補を順位づけするという考え方は、AHP(Analytic Hierarchy Process:階層分析法)という手法とも似ています。コンジョイント分析の場合は、アンケート調査を行ってデータを収集する必要があります。コンジョイント分析の目的は、消費者による多要因の評価を調査することです。一方、AHPは主体的な選択をできるかぎり合理的に行うことが目的です。たとえば、研究開発テーマの選択とか、人事における候補者選びなどです。
昔から研究開発マネジメントで、複数の評価基準を設けて、各テーマにスコアをつける方法がいろいろ考案されています。しかし、その多くは、複数の基準のスコアを単純に合計して、合計得点で比較します。評価基準に重みづけするという発想がなく、はっきり言って、分析の仕方としてはまぬけです。ここでAHPを使わなければどこで使うのか!というわけですが、日本では一向に理解されていません。
日本のエレクトロニクス産業の現在の惨状は、(もちろん世界的なパワーシフトという大きな背景があって回避できないことだったかもしれませんが)「マネジメントの失敗だ」というのが大方の見方になってきたようです。
「選択と集中」が必要なことはわかっていて、それをやろうとしたのですが、結局、(今になって言えることではありますが)そこに柔軟性が欠如していました。撤退やリストラを断行して(その時は英断のつもりだったのが)、取り返しのつかない間違いを繰り返してしまったようです。それは、役所の「線引き」と同じで、ガチガチのロジックに嵌っていたのです。
コンジョイント分析やAHPは、まさに「選択」のためのマネジメント・ツールです。これらをうまく使いこなせないのが、現在の日本の限界です。SOMは、これらの手法に、さらに大局観や柔軟性を付加することができます。

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