PREFMAPと自己組織化マップ(1)

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PREFMAPと自己組織化マップ(1)

XLSTAT-Pro/MXに搭載されているPREFMAP(プリファレンス・マッピング)が好評を博しております。この手法の原理の概要、および可能性と限界、および自己組織化マップ(SOM)を用いた改良版について、2回に分けて述べることにします。
消費者の1人ひとりが、「どの製品を好んでいるか?」については、消費者を対象にした調査によって、ある程度は客観的に知ることができます。しかし、そこから「どのような新製品を開発すればよいか?」という結論を導くことは、そう簡単ではありません。
なぜなら、味覚や触感、香り、色彩などの感覚に関する好みについて、消費者から直接聞きだす方法がないからです。しかし、これらの要素は、新製品を企画する上で、なくてはならない重要な要素です。
PREFMAPは、製品に関する官能評価データと消費者を対象にした調査データ(あるいは実際の購買行動データ)とをリンクさせて、上記の問題を解決する手法です。
PREFMAPの原理
XLSTATのPREFMAPにチュートリアルは、こちらにあります。
PREFMAPの原理は、上記のチュートリアルで説明しておりますが、ここではもう少し噛み砕いた表現でおさらいしておきます。ここで述べるのは、外的プリファレンス・マッピング(External Preference Mapping)です。
ステップ1.センサリー(官能)マップの作成
まずはじめに、製品の特性に関する評価データから開始します。上記の事例では、10種類のポテトチップス(製品)についての専門家による11個の特性(4つの質感と7つの香り属性)の評点です。これは、あらかじめ8人の専門家による評点から平均値がとられて、10×11の表にまとめられています。この10×11のデータを主成分分析して、得られるマップがセンサリー(官能)マップです。バイプロットにより、10種類のポテトチッと11個の特性が、同じ主成分平面の上にプロットできます。
ステップ2.消費者のクラスタリング
次に消費者を対象とした調査データに着目します。チュートリアルの事例では、99人の消費者について、10種類のポテトチップスの受容度が入っています。受容度は、1から30の整数に離散化されています。階層型クラスタ分析を使って、99人の消費者をグループ分けします。チュートリアルでは、9つのクラスタが抽出されています。得られたクラスタごとに、10個のポテトチップスの受容度の平均値を出しておきます。このステップは、分析の単純化のためのステップです。
ステップ3.プリファレンス・マップの作成
ステップ1で得られた各ポテトチップスの主成分得点X1とX2を説明変数として、ステップ2で得られた各ポテトチップスの重要度を目的変数として、回帰モデルを作成します。チュートリアルでは、9つのクラスタについて9個のモデルが作成されています。原理的には99人の消費者について、99個のモデルを作成することもできますが、チュートリアルではクラスタリングを用いて、単純化しています。
回帰モデルを作成するときに、F検定(またはF比)によって、つまりは、分散分析による交互作用の評価を行って、4種類のモデルを可能にしています。ベクトル・モデルというのが、いちばん単純な線形回帰モデルで、超平面のモデルを形成します。円形モデルと楕円モデルは、超2次曲面のモデルで、円形モデルには理想点と反理想点、楕円モデルには理想点、反理想点または鞍点が得られます得ます。これらのモデルが、ステップ1で作成されたセンサリー・マップの上に、重ね合わせで表示されものが、プリファレンス・マップとなります。
さらにプリファレンス・マップの各領域にどれぐらいの消費者が存在するかを示すのが等高線プロットです。製品を差別化しても、それを指示する消費者の存在しない領域に差別化しても意味がありませんので、このグラフで、消費者の存在を確認することは重要です。
全体の流れを図にすると下図のようになります。

PREFMAPの問題点
プリファレンス・マップ法は、以上のように、主成分分析、クラスタ分析、回帰分析を組み合わせた手法です。専門家による製品特性の評価データとマーケティング調査による消費者の製品の受容度データを関係づけることができる、という点で非常に優れた手法です。ただし、この手法の欠点はというと、一言で言って「情報損失が大きい」ということです。
ステップ1で主成分分析を行っておりますが、チュートリアルの事例では、第1および第2主成分の合計分散は、全体の分散の約70%です。言い換えれば、この段階で、製品の特性に関する情報の30%を捨てています。
そして、さらにクラスタ分析により情報が損なわれます。同じクラスタに属する消費者は、他のクラスタの消費者に比べて、各製品の受容において類似したパタンを持っていると考えられますが、クラスタは広がりを持っていますので、同じクラスタ内でも、実際にはまったく同一ではありません。
最後に回帰分析を行いますが、ここでもモデルの誤差が生じます。ベクトル・モデルのベクトルの長さが、決定係数によって決定されているので、ベクトルの長いモデル、つまり、マップのより外側に伸びているモデルに関しては、信頼性が高いのですが、マップの中央部分に近いモデルは、信頼性が低くなります。
つまり、製品のプロット、特性のプロット、クラスタ(消費者)のプロットの間の位置関係で、どの消費者がどの製品を好み、どのような特性を好むのかがわかるのですが、それはマップの外側の方の領域では解釈ができるものの、内側の領域ではあまりはっきりとは解釈ができないということになります。

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