PDFに代表者印を求める官庁の謎

投稿者:Kunihiro TADA

PDFに代表者印を求める官庁の謎

官庁と取引をしていると見積書・納品書・請求書に代表者印を押すように求められます。それを要求している官庁の人々が「代表者印」というものが法的にどのような意味を持つものか、また会社印(いわゆる各印)との違いを正解には理解していないように感じることがしばしばです。

官庁と取引を始める際に、いわゆる「債権者登録」というような書類の提出を求められるのですが、その際に、代表者印と各印の両方を登録させられることがしばしばあるのですが、このことこそが、それらの印鑑の違いを理解していないことを如実に示しているかと思います。会社の登記をしたことのある人なら誰にでもわかる簡単なことなのですが、代表者印は法務局に登録されている正式な印鑑です。つまり、会社の実印です。対して、各印は会社の「認印」のようなものです。

民間での通常の取引は、各印と担当者の認印で十分なはずです。

(昔、大橋巨泉が「認印なんていらない」と言っていたと思うのですが、それにも一理あるのですが、かと言って、めったやたらに実印を押しまくるのは危険なので、日常の使用のために認印やシャチハタが存在しているわけです。)

代表者印は、その名のとおり、代表者にしか使用を許されていない印鑑です。これは会社間の契約書を作成するとか、重要な書類にしか使用しないものです。どの程度の規模の契約が重要であるかは、会社の規模によって異なるにせよ、通常は数千円とか数万円の取引の請求書に代表者印を求めてくるというのは、甚だ非常識なことであります。つまり、官庁と取引すると、ほんの小さな取引でさえも担当者レベルでは代金の請求ができず、いちいち社長がいないと仕事を進めらないということが起きてしまいます。これが日本全国で行われると、相当な生産性が犠牲にされていることになります。

それでも「まあ、お役所はしかたがないなあ」と不平を言いつつ要求にしたがって代表者印を押して請求書を出しているのですが、最近ではそれに輪をかけて、信じられない要求がなされます。「請求書を郵送する際に、先にPDFでも送信してください」という要求が増えてきています。紙の請求書には代表者印を(しぶしぶながら)押して郵送しますが、請求書を発行している会計システムには各印の印影のみを登録しているので、PDFには各印のみが押されます。すると「PDFにも代表者印を押してください」と言ってくるのです。これにはぶったまげます。

実印をディジタル画像にしてしまって、それが実印として通用してしまうのであれば、第三者が簡単にそれをコピーして使用できてしまうではありませんか!そんなまぬけなことを誰がするものですか!

21世紀の今日、印鑑自体が20世紀の遺物であり、「もうそろそろ別の方法にしませんか?」という時代に、官庁があくまでも印鑑にこだわり続けて、国全体の生産性を大きく引き下げているなかで、その印鑑をディジタル画像として使わせて、印鑑のセキュリティ機能を根こそぎ無力化させてしまうということが起きています。

今までは紙に押した印影をコピーしても、それは必ず劣化するので、本物の印鑑の有効性が信じられてきたのですが、ディジタル画像は劣化しませんので、それを印鑑として使用するのは印鑑の自己否定であります。

PDFに実印を押せとを言っている役所の人は、たぶん、そもそも何のために印鑑が必要なのか?がわかっておらず、単に「形式だから」ということなのだと思います。しかし、そうした無知蒙昧な公務員が民間人に命令(指示)を行っている状況というのは背筋が寒くなります。

要求している人が「代表者印」の意味をわかっていないのだとするなら、官庁との取引用には「代表者の姓の認印」を債権者登録に登録しておくのが賢いやり方なのかもしれません。それなら担当者に預けることも可能です。わかって「代表者印」と言っているのか、まったくわかっていないのか、そこが謎です。

 

 

 

 

投稿者について

Kunihiro TADA administrator

マインドウエア総研株式会社・代表取締役。テクニカル・ライター、技術翻訳家、技術評論家。1982年より理工学出版社で情報通信/ニューメディア等の技術者向け先端技術セミナーの企画・運営に従事。LANをはじめ今日のITの基礎となる技術テーマの多くを取り扱った。1985年より大手コンサルティング会社で、先端技術分野の技術動向分析業務に従事。1986年に開催したAIチップ・セミナーは、ファジィ推論チップ等の当時の最先端のAI技術を国内に紹介して、国内のファジィ・ブームのトリガーとなった。1990年から技術評論家として、マルチメディアおよびCG関連の解説記事を執筆。1994年からはインターネットに活動基盤を移し、海外とのビジネスを開始。2000年よりViscovery、2003年よりXLSTAT、およびHuginのパートナーとなる。現在は東京を離れ、岡山に拠点を置いている。かつては産業界のブームを次々とビジネスのネタにしたが、現在はソフトウェアのライセンス販売に注力して、スローライフを決め込んでいる。                               これまでの経験から痛感することは、「人間のやることは、よくて3割程度しか当らない。ブームに寄り集まる人々はほぼ間違いなく成功しない。ビジョンがないからだ。彼らを相手に商売をすると、一時的に成功したかに見えるときもあるが、気づかないうちに自分も同類になっているだろう。流行を追ってはならない。他人がやらないことをやれ。腹の底から『本物だ』と思えることに専念するのが本望だ」

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