月別アーカイブ 9月 2020

投稿者:Kunihiro TADA

科研費でもオンライン決済でソフトウェアを購入できます。

これまで、公的研究機関や大学などが研究用の資材を購入する際に、納入業者に対して「見積書・納品書・請求書の3点セットに代表者印を押印して郵送してください」という鉄の掟がありました。とくに科研費で購入する場合は、「科研費だから」と何か特別なことのように強調されることがありました。なかには「おたくは科研費に対応していますか?」「おたくの製品は科研費で購入できますか?」と問われる場合すらありました。

この件について、科研費(科学研究費助成事業)を担当している日本学術振興会、および文部科学省に問合せを致しました。その結果、「そのような規定は一切ありません」との回答を得ましたのでお知らせします。

ソフトウェア・ライセンスに関しては、現在、インターネット上のオンライン決済で直接購入するのが一般的になっておりますので、科研費だからという理由でオンライン決済で購入できないという規定もない、とのことでした。むしろ、直接販売されている商品を、わざわざ、その商品とは関係のない出入りのブローカーを介して調達することは、その業者との不正な取引があることを疑わなければならないということになります。

一般の事業者は、当然のことですが、科研費とは何の関りもなくビジネスを行っております。一般の事業者が売り手の場合、科研費で購入する顧客に対して何か特別な対応をしなければならないという法的根拠は一切ありません。あらゆる商取引は商法に則って行われます。科研費だけ特別な法律が適用されるということはありません。商取引は、商品と代金を交換することで成立します。手短に言えば、売り手の同意がある限り、代金さえ払えば誰でも平等に商品を購入できる――ただそれだけのことです。売り手としては、その代金を科研費から支払われようが、あるいはその他の予算から支払われようが、何か区別をしなければならない理由はどこにもないのです。

民間企業に勤めている人々にとっては、当たりまえのことなのですが、売り手と買い手は法的に平等の立場です。そこがしっかりしていないと法律が機能しません。日本では「お客様は神様」という美しい言葉があるのですが、もともとは歌手の三波春夫さんがステージで観客を喜ばせるために使った言葉です。企業の経営者の中にも、企業イメージをよくさせるために好んで使う場合があります。しかし、商品の買い手が「お客様は神様だぞ」と言うのは、まったくの筋違いであることをご理解頂く必要があります。(残念なことに、こうした根本的な考え違いをしている人が大学や研究機関には多数おられます。)売り手がいつでも買い手にぺこぺこにして、買い手の要求を何でも受け入れなければならないというようなことは、法治国家では認められておりません。

財源が科研費であろうが、別の予算であろうが、研究者が外部から商品やサービスを買う場合、それは普通の商取引と何ら異なることはありません。つまり、買い手が売り手に要求できることも法律に基づいて一定の制限があります。たとえば、最近はなくなりましたが、昔は大学等に商品を販売すると「請求書の日付は空欄で」という指示がありました。あれは公正な取引が成り立たない完全な違法行為でした。民間ではあり得ないのですが、もし大企業なら独占禁止法で取り締まられる内容であり、そして、公的機関の場合は職権濫用罪となります。

しかし、世の中には、科研費で購入することを何か特別なことに仕立て上げたい人がまだまだ存在します。一般世間とはかけ離れた取引方法によって、仲間内だけで取引をしたいようなのですが、もはやそうしたことは違法行為ですのでやめて頂く必要があります。

見積書・納品書・請求書の3点セットに代表者印」というのは、その典型で、これにはまったく法的根拠がなく、一般の普通の会社と取引を行うことを事実上困難にすることを目的とした嘘のルールなのです。とくに「代表者印」というのが重要なところで、代表者印というのは会社の実印です。それは社長にしか押せません。普通の会社は、日常的な取引のために代表者印なんて使用することができません。中小零細企業でさえも、たとえば平社員が担当する案件の1万円の請求書に代表者印を押印できるかというとまず不可能です。

つまり、公的研究機関や大学の周辺には、それらの特定の機関に対して営業活動をしている事業者が存在しています。「見積書・納品書・請求書の3点セットに代表者印」は、これらの業者が優先的に受注できるようにするための典型的な仕掛けなのです。そうした事業者は、特定の商品を持っているわけではなく、研究者に取り入って、研究者が指定する商品の調達を請け負い、その商品を本来の発売元から仕入れて、研究者に納品し、利ザヤを稼ぐというビジネスをやっています。つまりは、研究資材の調達を請け負うブローカーです。つまり、一般の事業者にとっては、直接販売すれば定価で売れるところを、関係のないブローカーが間に入ってきて利益をかすめ取っていくという迷惑な存在なのです。

とても多くの研究者が、こうした研究資材ブローカーに利用されてしまっているという事実をご理解ください。長年関係が続いてしまっていて、すっかり騙されています。「科研費対応」とか「指定業者」とか言っているかと思いますが、それらはすべて嘘です。そんな規定は一切ありません。彼らは、研究者にぺこぺこして、何でも「はいはい」と言うことを聞くので、使い勝手がよいでしょうが、そのような表面に騙されないでください。彼らは特定の商品の販売権は持っておらず、彼らが個々の商品を販売できるという法的根拠は希薄なのです。少なくともソフトウェア・ライセンスをブローカーが転売することは禁止されております

財源が科研費であっても、あるいはその他の助成金や補助金であっても、あらゆる商品は、その商品の本来の発売元、正規代理店から購入することができます。むしろ、そうするべきであって、出入りの業者を介して購入することの方が不正となりますのでご注意ください。オンラインで購入できるものは、オンラインで購入してください。

 

 

 

 

 

投稿者:Kunihiro TADA

第3次AIブームがついに終了!

だそうです。やれやれお疲れ様でした。善良な社会人の皆様は、速やかに各自の持ち場に戻って、しっかりと働きましょう。

帰る所のある人はまあよいのですが、帰る所がない人がこれからたいへんです。そう、若い”データサイエンティスト”の皆様です。皆さんは、キャリア・プランニングを一からやり直す必要があります。

テクニカルな面で言えば、真っ当なプログラミングか、あるいはちゃんとした統計解析を勉強する必要があるでしょう。データサイエンスでは、どちらも中途半端なままスポイルされてきた要素です。しかし、それもけっこう茨の道です。これらの技能を身につけたとしても、これから職にありつけるかどうかは不確定だからです。なぜならIT産業はすでにGAFAなどに寡占されてビジネス・チャンスがなくなっていて、斜陽化が始まっているからです。

統計解析は、業種に限らず、これからの企業の意思決定においてますます重要になってくるのですが、これもあまり楽観的な未来が描けそうにありません。なぜなら、統計解析を習得したとして、組織内でそれを活かしてバリバリ仕事ができるかというと、残念ながら日本の組織では、その環境がまだ整っていないのです。データサイエンティストの皆さんは、これまでじつに貴重な経験をされたことでしょう。すなわち、まわりの大人たちに情報収集・分析能力が欠如していて、彼らがいい加減な風評を頼りにビジネスの意思決定をしていることを目の当たりにしてきたことでしょう。

そうです。これこそが根本問題なのです。大東亜戦争や80年代バブルとその崩壊後の対応などを見ても、日本の組織の情報収集・分析能力の低さは致命的なのです。60年代70年代の高度成長期は奇跡的な大発展を遂げたのですが、それは日本の政府や大企業が意図的な戦略を持ってそれを実現したわけではなく、たまたまそのときの国際情勢(米ソ冷戦)がそれを許していただけなのです。もうあのような幸運は二度と訪れないでしょう。この先、我々日本人が科学的に戦略的意思決定を行う方法を確立していかない限り、アジア諸国の台頭の中で日本の存在感は限りなく縮小していく運命にあります。

今後、我々が生き残っていくために、我々は、日本の企業や行政組織に、科学的な意思決定の方法を根付かせる”戦い”に挑まなくてはなりません。私が20年前にKohonenの自己組織化マップ(SOM)を始めた動機は、これを戦略的意思決定ツールとして普及させようと考えたからです。私は、20年間、孤軍奮闘で戦って来ました。

第3次AIブームを経て、私の問題意識に共感できる人材が育ってきているとしたら、ブームもまんざら無駄にはならなかったと言えるかもしれません。ブームに翻弄されてきたデータサイエンティストの皆さんは、ぜひ直観力をフルに働かせて、また情報をよく分析して、未来の可能性、自己の身の振り方を見つけてください。