Asia (胸部クリニック)

この事例は, Lauritzen & Spiegelhalter (1988)のセミナー・テキストで発表されました.

呼吸困難 (dyspnoea) は,結核(tuberculosis),肺がん( lung cancer),気管支炎( bronchitis),これらの疾患の複数が原因かもしれないし,またはこれらには起因しないかもしれない. 最近アジアを訪問した人は結核のリスクが増大するが,一方,喫煙は肺がんと気管支炎の両方にリスク因子となることが知られている. 呼吸困難 (dyspnoea)の有無なしに,胸部レントゲン( X-ray)の結果だけでは 肺がんと結核を判別できない.

もし患者喫煙者であることが判れば,我々は我々の肺がんと気管支炎に関する信念(リスクの増大)を調整するであろう.しかしながら,結核に関する我々の信念は 変わらない(すなわち,tuberculosisは, 変数の空集合を仮定して,"smoking" の条件付き独立である).ここで,我々は,患者のレントゲン(X-ray)で陽性の結果を得たとしよう. このことは,結核(tuberculosis)と肺がん( lung cancer)に関する我々の信念に影響するが,気管支炎( bronchitis)に関する信念には影響しない(すなわち, 気管支炎( bronchitis)はsmokingを仮定して X-ray の条件付き独立である).ただし,我々は患者が呼吸困難に苦しんでいることも知っていて, レントゲンの結果( X-ray) は,気管支炎( bronchitis)に関する信念にも影響する(すなわち,"bronchitis" は, "smoking" と "dyspnoea"を仮定して "X-ray" の条件付き独立ではない).

上記の知識に関するベイジアンネットワークは,下記のようになる:

上図は,各ノードの内側にノードのラベルを示している.ユニークなノード名が,ネットワーク中の各ノードに割り当てられている.ノード名は次のとおり: "Visit to Asis?" (アジアを訪問したか?)はA,"Smoker?"(喫煙するか?)はS, "Has tuberculosis"(結核を患っているか?)はT,"Has lung cancer"(肺がんを患っているか?)はL, "Has bronchitis"(気管支炎を患っているか?)はB,"Tuberculosis or cancer"(結核または肺がん)は E, "Positive X-ray?" (レントゲンが陽性?)は X,"Dyspnoea?" (呼吸困難?)はD.

このネットワークは,Hugin ソフトウェアと一緒にコンピュータにインストールされています.Huginグラフィカル・ユーザー・インタフェースでネットワークを開いてください (注意:ブラウザではHuginを直接開くことはできません).Huginがインストールされたディレクトリ(たとえば, C:\Program Files\Hugin\Hugin Lite\Samples)に,このネットワークがあります.

Hugin ダウンロード・サービスにもこの事例があります.


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翻訳者:多田くにひろ(マインドウェア総研